【連載29:AFTERⅡ】母からの追求…やっぱり彼が信用できない

テッサは恋人ハーディンの裏切りを許せず、彼の元を飛び出した。彼女が身を寄せたのと同じモーテルに止まっていた同僚トレヴァーは何かと気にかけてくれるが、出張先のホテルの部屋に訪れたハーディンと鉢合わせしてしまう。翌朝、トレヴァーがテッサをディナーに誘うが……。『AFTER seasonⅡ 壊れる絆』連載第29回。

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ハーディン、トレヴァー、知らない男……奔放すぎる自分に戸惑う

「やっと終わったわね。これで眠れるわ」キンバリーはエレベーターに乗りながら、大きくうめいた。

「昔の若さはもう、ないようだね」クリスチャンがからかうと、彼女はあさっての方向を見ながら彼の肩にもたれた。

「テッサ、明日はね、このふたりが会議しているあいだ、ショッピングに出かけるわよ」キンバリーはそう言って目を閉じた。

すっごく楽しそう。それに、シアトルでのトレヴァーとの落ち着いたディナーも─ハーディンとの奔放な一夜のあとでは、信じられないくらいすてきなことだ。

この週末はすでに、自分の振る舞いにちょっと戸惑ってる。見ず知らずの男にキスして、ハーディンに無理やりセックスしろとせがんだかと思えば、また別の男性とディナーに行こうとしているなんて。とはいえ、三番目の彼はいちばん害がなくて安全だ。すくなくとも、性的な関係が絡んでくることはない。

あなたとトレヴァーはそうでしょうけど、ハーディンとモリーは……心の片隅でそうつぶやく声がする。

もう、ムカつく。

わたしの部屋の前まで来ると、トレヴァーは立ち止まった。「六時半に迎えに来るよ、いいかな?」

にっこりほほ笑んでうなずいてから、わたしは犯行現場に足を踏み入れた。

ディナーの前にすこし仮眠するつもりだったけど、結局、もう一度シャワーを浴びた。ゆうべの出来事のせいで自分が汚れたような気がしたし、ハーディンのにおいを体から消し去りたかった。

二週間前には、ハーディンとロンドンへ行って彼のお母さんとクリスマスを過ごすものだと思っていたのに、このざまだ。いまのわたしには住むところもない。

その瞬間、母に電話をかけ直さなければならないのを思い出した。ゆうべ、何度も何度も母が電話してきたというのに。

 

「彼との関係は終わったと思っていたけど?」母の声

シャワーから出て、またメイクをしながら母の電話番号を押した。

「あら、テレーサ」とそっけない声。

「もしもし、ゆうべはかけ直さなくてごめんなさい。出版業界の会議でシアトルに来ていて、クライアントとディナーを取っていたものだから」

「ああ、そうだったわね。彼もいるの?」

そんな質問をされてぎょっとする。「いいえ……なぜ、そんなこときくの?」と、なるべく何気ない口調で質問し返す。

「ゆうべ、あなたの居場所を探り出そうと、彼が電話してきたから。ここの番号を彼に教えたなんて、困るわね─わたしが彼をどう思ってるかはわかってるでしょう、テレーサ?」

「彼に番号なんて教えていな─」

「彼との関係は終わったと思っていたけど?」母が遮るように言う。

「終わったわ。わたしは終わらせた。きっと、彼はアパートメントのことで何か知りたかったんじゃないかしら」

まったくのうそだ。母のところにまで電話してくるなんて、ハーディンはどうしてもわたしと話をしたかったにちがいない。そう思うと、胸が痛むと同時になぜかうれしかった。

「それはそうと、クリスマス休暇が終わるまで寮には入れないって連絡がきたわ。今週は仕事も授業もないなら、こっちへ戻ってくればいいじゃないの」

「ああ……うん、わかった」母と実家でクリスマスなんて過ごしたくないけど、ほかに選択肢もない。

「じゃあ、月曜日に。あとね、テッサ、自分のためを思うなら、あの男とはできるだけ距離を置きなさい」そう言って母は電話を切った。

実家で母と一週間も過ごすなんて地獄だ。あそこで、どうやって十八年間も暮らしていたんだろう。正直なところ、自由を味わってみるまで、母があんなにひどい人だと気づかなった。

ハーディンは火曜日にはイギリスへ発つ。あとふた晩だけモーテルに泊まり、彼がいなくなってからアパートメントへ行ってもいいかも。ほんとうは気乗りしないけど、まだわたしの名前で借りてる場所だし、ハーディンに知られる心配はないはずだ。

わかってはいたものの、スマホの画面をスクロールして、ハーディンから新しくメッセージや留守電がないことを確認した。

モリーと寝たのをあんなふうに暴露してくるなんて、信じられない。最悪なのは、クラブで会った男とキスしたのをこっちが言わなければ、ハーディンもあんなことは言わなかったってところ。まったく、ふたりの“関係”が始まるもとになった賭けと同じ。

つまり、とにかくハーディンのことは信用できないってことだ。

メイクを終えて、黒のシンプルなワンピースを着ることにした。ウールのプリーツスカートの日々がはるか昔みたいに思える。もう一度コンシーラーを首筋に塗ってから、迎えが来るのを待つ。いかにもトレヴァーらしく、ドアがノックされたのはきっかり六時半だった。

 

次回、シアトルから戻ったハーディンは、父の住む家を訪れる。今となっては唯一、友人といえるランドンに相談するため……。

 

 

【参考】

 


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