【連載30:AFTERⅡ】「俺はどうすればいい…」彼の苦悩

恋人ハーディンに裏切られ、アパートを飛び出したテッサ。彼のことを忘れようと仕事に打ち込むテッサだったが、出張先のシアトルから彼に電話をしてしまう。ホテルに現れたハーディンと一夜を共にするが、翌朝2人はまた言い争いになり、ハーディンは「俺はモリーと寝た」という捨て台詞を残してシアトルを去った……。連載第30回。

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まさかここに来るなんて……

なかへ入ろうかどうしようか決められないまま、親父のでかい屋敷を見つめた。

カレンがやったのか、小さなクリスマスツリーや電飾、踊るトナカイみたいなもので外観が飾られている。庭には、でかいサンタのバルーン。風に吹かれてよじれる姿はおれをばかにしているようにも見える。車を下りると、びりびりに破いた航空券が外に舞い出た。

使わなかった航空券がちゃんと払い戻されるよう、電話をしなくては。でないと、二千ドルがパーだ。

とりあえずひとりででも行って、このみじめな状態からしばらく逃げるべきだったかも。でもテッサが来ないなら、ロンドンの実家へ戻るのもそんなに楽しくない。代わりに母さんがこっちへ来てもいいと言ってくれてよかった。口先だけじゃなくて、アメリカに来るのにほんとうに興奮しているようだった。

親父の家のドアベルを鳴らしながら、なぜここへ来たのか言い訳を考えようとしたが、まともな作り話を思いつく前にランドンが現れた。

「よう」早く入れとドアを開けてくれた彼に向かって、つぶやく。

「どうしたの?」

どうすればいいのか、何を言えばいいのかわからず、ポケットに両手を突っこむ。

「テッサはいないよ」ランドンはおれのことなどかまわず、さっさとリビングへ歩いていった。

「ああ……わかってる。彼女はシアトルにいるんだ」やつのすこしあとをおれもついていく。

「あ、そう」

「あのさ……おまえに話があって、というか……親父に、いや、ケンに。もしくは、おまえの母さんでもいい」

「話? なんの?」ランドンは手にした本からしおりを取って読み始めた。その本を取り上げて暖炉に投げたくなったが、そんなことをしてもなんにもならない。

「テッサのことだよ」おれはつぶやいた。口ピアスをいじりながら、やつが笑い出すのを待つ。

だが、ランドンは本を閉じてこちらを見た。「はっきりさせておくけど……テッサは、きみには関わりたくないと思ってる。ぼくに話をしに来たのか? あるいはケンとか、ぼくの母でもかまわない、って?」

「ああ……そうだな……」くっそ、すげームカつく。こんなの、きまり悪すぎる。

「わかった……じゃあ、何をしてほしい? ぼくとしては、テッサはもう二度ときみに話しかけないほうがいいし、正直、きみも踏ん切りをつけたほうがいいと思う」

「嫌味なことを言うのはやめろよ、ランドン……自分がやらかしたのは承知しているけど、おれは彼女を愛してるんだ。彼女もおれを愛してるってわかってる。いまはただ、テッサも傷ついてるだけなんだよ」

ランドンはため息をつき、あごに手をやった。

「わからないな、ハーディン。きみのしたことはかなり許しがたい。彼女の信頼を裏切って、みんなの前で恥をかかせたんだからね」

「わかってる……わかってるよ。くそっ、おれがわかってないとでも思うのか?」

ランドンはまた、ため息をついた。

「助けを求めてここへ来たのをみると、相当ぐちゃぐちゃな状況だってことはわかるよ」

「で、おれはどうすればいい? テッサの友人としてではなく、おれの……わかるだろ、おれの親父をステップファザーに持つ者として、どう思う?」

「つまり、義理の兄弟ってことだろ」ランドンはにっこりした。おれがあきれた顔をすると、彼は声をあげて笑った。

 

もうわからない……「おれはどうすればいい?」

「まず、テッサとはぜんぜん話をしてないの?」

「ああ……実はゆうべ、シアトルにいった。彼女は部屋に泊めてくれたよ」

「部屋に?」ランドンは見るからに驚いた顔だ。

「ああ、彼女は酔ってた。ひどく酔ってて、文字どおり、命じられるようにしておれは彼女と一発ヤッた」

おれの言葉遣いにランドンが顔をしかめる。

「ごめん……彼女はおれに、彼女とベッドをともにさせた。っていうか、無理やりじゃない。おれもそうしたかったから。だって、ノーだなんて言えるわけ……彼女は……」なんで、こんな話をランドンにしてるんだ?

彼は両手を空に挙げた。「わかった! もういいよ! なんてこった」

「要するにそういうことで、今朝、おれはまた、言わなくていいことを口走ったんだ。彼女がほかの男にキスしたって言うから」

「テッサがほかの男に?」ランドンは信じられないという声をだした。

「ああ……ナイトクラブで会った男だとさ」そんなこと、思い出したくもない。

「ワオ。きみに対してかなり怒ってるみたいだね」

「わかってる、って言っただろ」

「今朝、彼女になんて言ったの?」

「昨日モリーと一発ヤッた、って」

「ほんとに? あの……モリーとセックスを?」

「とんでもない、そんなことしてねえよ」おれは首を横に振った。

よりによってランドンを相手に、こんな話を包み隠さずしてるなんて。いったいどうなってるんだ?

「じゃあ、なぜ、セックスしたなんて言ったんだ?」

「テッサがおれを怒らせたからだ」おれは肩をすくめた。「ほかの男とキスしたなんて言うから」

「なるほど……テッサを傷つけるためだけに、彼女がひどく嫌ってるってわかってるモリーとセックスしたって言ったわけだ」

「まあな……」

「たいしたもんだよ」ランドンはつき合いきれないという顔をした。

辛辣なやつの表情を振り払うように、おれは手を挙げた。「彼女はおれを愛してると思うか?」どうしても知りたくて、こんな質問をする。

ランドンはふいに真剣な表情でこちらを見た。「わからないな……」やつはうそをつくのが下手だ。

「教えろよ。おまえは誰よりもよく彼女を知ってる。おれを別にして、だが」

「彼女はきみを愛してる。でも、あんなふうに裏切られたから、きみに愛されたことは一度もなかったと思ってる」

ランドンの言葉がまた、おれの心を打ち砕く。やつに助けを求めてここまで来た自分が信じられないが、やっぱりアドバイスが必要だ。

「どうすればいい? なんとかしてくれよ?」

「そうだな……」

 

次回、ランドンがハーディンにしたアドバイスとは? 一方テッサはクリスマスはどう過ごすのかとトレヴァーに訊かれて……。

  

【参考】

 


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