偽装離婚って何?偽装離婚する理由と「ばれたらどうなる」を徹底調査!

“偽装離婚”という言葉をご存知でしょうか? 漢字の意味からおよそ予想がつくかと思いますが、世の中には、離婚届を出して「別れたふり」をする夫婦がいるのです。一体なぜそんなことを? それって何かヤバイことなんじゃ……!? 今回は、偽装離婚にまつわる疑問に、デイライト法律事務所の竹下龍之介弁護士に答えていただきました。

1:偽装離婚ってそもそも何?

偽装離婚とは、実際には夫婦関係にあって別れるつもりはないものの、離婚届を出して対外的に離婚を装うこと。

偽装離婚にともない、完全に別居する夫婦もいますが、中には、住民票上の居住地は異なるものの、実際には元の家で一緒に暮らし、離婚前とほぼ同じ生活を送り続ける夫婦もいます。

「あっ、私、離婚して旧姓に戻ったからよろしく!」

と言いつつ、休日には元旦那とラブラブでショッピング……なんて女友達がいたら、もしかして偽装離婚かもしれません!?

 

2:なんで偽装離婚なんてするの?偽装離婚のありがち理由3つ

別れる気なんてさらさらないのに、離婚届を出す……。これってとても奇妙ですよね。なぜ、わざわざ戸籍にバツがつくようなまねをするのでしょうか? 竹下弁護士によれば、偽装離婚を行う主な理由は以下の3つとのことです。

(1)債権者からの強制執行を免れるため

「夫婦の一方に多額の借金があり、債権者からの強制執行を逃れるために偽装離婚が利用されることがあります。

たとえば、夫が多額の借金をしているケースを想定しましょう。離婚すると、婚姻中に夫婦で築いた預金などの財産を、夫婦間で分け合う“財産分与”を行います。そして、この財産分与を利用して、夫名義の財産を妻のものにしてしまうのです。

離婚に伴う財産分与で、ほぼ無一文になった夫は、自己破産を申請します。自己破産とは、国の力で借金をチャラにしてしまう制度。なので、夫の債権者は手も足も出すことができません。

このように資産隠しを目的として、偽装離婚が行われることがあります」(以下、「」内は竹下弁護士)

(2)行政上の扶助を受けるため

「生活保護や児童扶養手当など、行政上の扶助を受けるために偽装離婚を行うことが考えられます。

生活保護は経済的に困窮している人に対して、最低限度の生活を保障する公的扶助。 受給資格として、さまざまな要件が定められていますが、ざっくり言えば、資産・収入が一定水準以下であることが必要です。

たとえば、夫は働いていてある程度の収入があり、妻が無職で収入がないケースを想定しましょう。婚姻中は、夫の収入によって受給資格を満たしません。しかし、離婚すれば妻が生活保護を受けられる可能性があるのです。

偽装離婚で、実質的には離婚前と同じ生活を続ける場合、夫の収入と妻が受ける生活保護のダブルインカム状態がもたらされます。

他方、児童扶養手当は、父か母の一方からしか養育を受けられない一人親家庭の児童のために支給される手当です。子どもの数や収入にもよりますが、離婚したあと月額5万円ほど支給されるので、これを目当てに偽装離婚を行うこともあります。

偽装離婚によって生活保護や児童扶養手当を受給することは、各制度の趣旨に著しく反するものであり、行政に対する一種の詐欺行為に当たるといえるでしょう」

(3)経歴のロンダリング

「偽装離婚は、多重債務者の経歴のロンダリングのために行われることもあります。

たとえば、妻が多重債務者で金融機関のブラックリストに乗っており、お金を借りたくても追加融資を受けられないというケースを想定しましょう。

この場合、離婚して妻が旧姓に戻り、新規にキャッシングの申し込みをすれば、一時的に金融機関のブラックリストを通過できて、お金を借りられる可能性があるのです」

 

3:偽装離婚がバレたらどうなる?リアル事例4つ

上記で、「偽装離婚によって行政上の扶助を受けることは、一種の詐欺」というお話もありました。偽装離婚ってヤバイにおいがプンプンしますよね。これバレたら、一体どうなるのでしょうか!?

(1)強制執行逃れの偽装離婚がバレた→強制執行妨害罪

財産隠しのために偽装離婚を行い、「僕、無一文だもーん。自己破産したし、無い袖は振れません!」と債務者である夫が開き直ったとしても、債権者たちは、ただでは引き下がらないはず。

あの手この手で財産の動きを調査して、「偽装離婚見破ったり!」と債権者たちが突き止めたらどうなるのでしょうか?

「借金を免れるための偽装離婚がバレて、債権者たちに告訴されたら、強制執行妨害罪が成立して、3年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金に処せられるおそれがあります」

(2)行政上の扶助を受けるため偽装離婚がバレた→支給打ち切り、返還請求

「生活保護や児童扶養手当などの支給を受けている場合、民生委員やケースワーカーが自宅を訪れて生活実態の調査を行うことがあります。

生活保護も児童扶養手当も、婚姻生活が続いていれば支給されないはずのもの。なので、偽装離婚であることが判明した場合、まず、条件違反を理由に支給打ち切りになる可能性が濃厚です。それだけでなく、過去に受給したものの返還を求められるおそれもあるでしょう」

ちなみに、これって詐欺罪には問われないのでしょうか?

「一応、形式的には詐欺罪に該当しえます。ただ、行政側は、わざわざ詐欺罪の告訴まではせず、粛々と金銭返還請求手続きを進めると思われます」

(3)経歴ロンダリングがバレた→即時返還請求や詐欺罪成立の可能性も

「お金を貸した金融機関が個別に調査することによって、経歴ロンダリングのための偽装離婚が判明することはあります。姓が変わっても下の名前は同じですし、さらに、住所や保証人が同じであればバレバレです。

金融機関側としては、本来、ブラックリストに載った人物であればお金を貸さなかったのに、別人だと騙されて金銭を交付したわけです。そのため、詐欺罪が成立する可能性があります。

また、仮に金融機関が詐欺罪の告訴には至らなくても、契約の約款違反を理由に、貸したお金をすぐに全額返還するよう求めてくる可能性は高いでしょう」

(4)夫が別の女性と再婚!

偽装離婚では、たとえ他人にはバレなくても、別の問題が発生することもあるようです。

「離婚については、“離婚届を出す意思さえあれば有効である”、という解釈がとられています。共同生活を解消する意思までは必要とされていません。

このため、妻はいずれ夫と再婚するつもりだったのに、偽装離婚中に夫が勝手に別の女性と再婚してしまった、というトラブルが発生することがあります。もちろん、夫と妻が逆で、妻が勝手に別の男性と……というケースも考えられますね。

たとえ、偽装離婚であっても、離婚は成立しているので、別の人との再婚に障害はないのです。元配偶者が“そもそも離婚が無効なんだから、その再婚はおかしい!”と裁判所に訴えても、その主張が認められることはまずありません」

 

4:まとめ

最後に、偽装離婚の法律相談について、竹下弁護士からコメントをいただきました。

「さすがに、“偽装離婚したいけど、どうすればいいですか?”と堂々と相談にくる人はいません。しかし、“夫からこのような提案を受けているのだけれど……”という相談はときどきあります。

その場合、前掲のような法律上の問題点をお話して、“不正なことがらには、くれぐれも加担しないように”、とアドバイスするようにしています」

借金逃れや不正受給など、さまざまな目的がある偽装離婚ですが、バレたら大変なのはもちろんのこと、仮にバレないとしても、やってはいけないのは当然ですよね。「こんなおいしい話が……」と夫から持ちかけられても、安易に離婚という制度を悪用するのは絶対にやめましょう。

 

【取材協力】

・・・弁護士の専門特化を第1の行動指針としており、離婚事件については、離婚問題を専門とする弁護士のみで構成される離婚事件チームが対応。離婚問題において、年間の相談件数は500を超える全国トップクラスの法律事務所。離婚弁護士の全員がFPの資格を取得しており、離婚問題に悩むクライアントに対して、生活設計を含むきめ細やかなサポートを提供。