結婚契約書の書き方!結婚契約書の内容、効力、公正証書にする方法を解説

みなさんは結婚契約書ってご存じでしょうか? 日本ではまだあまりなじみのないものですが、夫婦間で結婚生活に関するさまざまな取り決めをして、それを契約書として残しておくことができるのです。今回は、結婚契約書に記載する内容やその効力について、葛西臨海ドリーム法律事務所の矢野京介弁護士からお話をうかがいました。

1:「結婚契約書」とは?

結婚契約書とは、これから結婚する男女、あるいは既に結婚をした夫婦の間で、今後の円満な夫婦関係を構築するために、結婚生活の約束事を決めて作成する契約書のことです。

夫婦の間で契約書……というと、何だか堅苦しい感じもしますよね。日本においては、まだそれほどメジャーな存在ではない結婚契約書。実際には、どんな人がこれを作成することがあるのでしょうか。早速、葛西臨海ドリーム法律事務所の矢野京介弁護士にお話をうかがいました。

矢野弁護士:「結婚前にお金に関することを取り決めておきたいという目的で、結婚契約書を作成することが多いです。

例えば、お金持ちの旦那さまが、自分が稼いだものはすべて自分のものにしたいというような場合、結婚契約書でそのように定めておきます。というのも、民法上、結婚前からの財産は各自のものであるのに対し、結婚後に築いた財産は夫婦の共有財産という扱いになるからです。

別のケースとして、浪費癖がひどいパートナーと結婚する場合、結婚契約書で借金そのものを禁止したり、あるいは、無断で借金した場合に、配偶者は一切その責任を負わないことを定めたりすることもあります」

契約……ということで、やはりお金がらみのことが多いようですね。だたし結婚契約書では、お金に関すること以外にも、結婚生活に関するさまざまなルールを定めることができるとのこと。

いざ結婚生活をスタートしてみて「こんなはずじゃなかった!」と幻滅したり、後悔したりすることはよくある話。あらかじめ結婚観について、パートナーとよく話し合い、不安や離婚の火種を解消しておくというのも、結婚契約書を作成するメリットだと言えそうです。

 

2:【例文あり】結婚契約書に記載する内容6つ

では、結婚契約書には具体的にはどのような内容を盛り込むことができるのでしょうか? 以下、例文をまじえてご紹介します。なお、例文内の“甲=夫、乙=妻”です。

(1)仕事と家事の分担に関すること

男女共働き家庭では、家事の分担にまつわる揉めごとがつきものですよね。そこで、あらかじめ仕事と家事の分担について、結婚契約書で定めておくことができます。

あるいは、専業主婦が「いくら家事をがんばっても、ちっとも報われない!」なんて不満を抱かないためのルールを設けることも可能です。

・家事労働は分担・協力し行うものとする。以下の仕事は各々が責任を持って果たす。

・甲は自分の仕事を支えているのは乙であることを認識し、乙の家事労働に対して感謝の気持ちを忘れない。

(2)お金に関すること

先ほど、大金持ちや浪費家の例を挙げましたが、もう少し一般的なケースとして、生活費やお小遣いなどについて定めることもできます。

・甲と乙は収入の〇%を家計に入れ、その合計額で婚姻生活を営む。

・毎月小遣いとして、甲〇万円、乙〇万円を自由に使えるものとする。ただし、収入その他の条件によって、話し合いのもと金額を変更することができる。

(3)子育てに関すること

子育ては結婚生活において、もっとも関心の高いテーマのひとつですよね。しばらくは夫婦水入らずでいたいから子どもはまだ先かも……というカップルも、結婚前に一度話し合ってみるのもいいかもしれません。

・甲と乙は、子どもに愛情を持って接し、子の健やかな成長のために協力し育児にはげむ。

・子どもの養育は甲及び乙が十分協議し、生活費・教育費・娯楽費その他子どもの養育に要する費用は、甲と乙の収入に応じて公平に分担する。

(4)親族との付き合い方

夫と妻の関係自体は良好でも、そこに親族がからんでくると何かとトラブルが発生することも。心配な場合は、結婚契約書でルールを定めておきましょう。

・甲及び乙は、お互いに自分の両親も相手の両親も大切にする。

・甲及び乙は、互いの親族と同居する義務を負わない。ただし介護等で同居を要する事情が生じた場合は十分な協議をし、思いやりを持った行動をするよう心掛ける。

(5)異性関係について

何かと世間をお騒がせな不倫問題。芸能人だけでなく一般人でも決して無縁ではありません。

配偶者以外と肉体関係を持つのは当然ご法度で、これは離婚事由にもなりますが、もっと手前の関係であっても「パートナーが自分以外と親密になるのは許せない!」と感じる人が多いのではないでしょうか。

そこで、異性関係についても結婚契約書で定めることは可能です。万が一、契約違反があった場合の罰則を決めておくこともできます。

・甲と乙は、相手方に無断で異性と密会してはならない。これに違反した場合は、相手方に対して金30万円以内の金品を贈与するものとする。

(6)結婚契約書で定められないこと

上記以外にも、結婚記念日、夫婦の会話やプライバシーに関することなど、結婚生活のまつわるさまざまなことがらを結婚契約書で定めることができます。

実に守備範囲の広い結婚契約書ですが、逆に、盛り込むことができない内容もあるのでしょうか?

矢野弁護士:「公序良俗に反することは、結婚契約書に定めることはできません。例えば、慰謝料1億円など法外な額を定めたり、体罰を定めたりした場合は、契約は無効になります」

そういえば、少し前に夫婦間での“セフレ容認契約書”なるものが物議を醸しましたが、これは公序良俗に反しないのでしょうか?

矢野弁護士:「セフレ容認というのは、要するに、貞操権(配偶者が貞操を守ることを求める権利)をあらかじめ放棄するという契約です。これは、公序良俗に反して無効とまでは言えないでしょう」

そういう契約も一応はアリなんですね……。

 

3:結婚契約書の効力は?公正証書にしたほうがいいの!?

一口に結婚契約書といっても、作成の方法は大きく分けると3つ。夫婦間のみで作成するもの、弁護士などが立会人になるもの、そして公正証書にする場合があります。それぞれ効力にはどのような違いがあるのでしょうか?

(1)夫婦間で作成して署名・押印しただけのもの

夫婦間で話し合いをした結果を書面にまとめて、署名・押印しさえすれば、一応、結婚契約書は完成します。この方法によれば、お金も手間もかかりませんが、何か落とし穴はあるのでしょうか?

矢野弁護士:「夫婦間だけで作成した場合には、万が一、契約違反があって相手に慰謝料を請求したい場合に、相手側から“その契約書は無理やり書かされたものだから無効だ”などと主張されるおそれがあります」

いくら署名・押印があっても、夫婦間だけで作成したものでは言い逃れされる余地があるのですね。それに、素人が作ったものでは、形式面・内容面において何らかの不備があり、そこを突かれてしまうことも……。

もちろん、結婚生活についてよく話し合うこと自体にメリットがあるので、契約書を作ることが無意味というわけではありません。ですが、夫婦間のみで作成したものでは、いざというときに役に立たないおそれがあることは覚えておきましょう。

(2)弁護士などが立会人になるもの

夫婦間だけで作成するのは何かと不安……ということで、弁護士などに立会人になってもらうという方法もあります。

この方法によれば、契約違反があった場合に「無理矢理書かされたから無効だ!」なんて言い逃れができないので、夫婦のみで作成するよりも効力は強いと言えるでしょう。

(3)公正証書

もっとも厳格な方法は、公正証書にすること。公正証書で作る場合、公証人が契約書の内容や本人の意思を確認したうえで、公正証書に署名・押印します。公正証書を作成した場合、どれくらいの費用がかかり、効力はどうなるのでしょうか?

矢野弁護士:「費用は、その契約書に定められた慰謝料などの額によりますが、だいたい数万円以内でしょう。公正証書にしておけば、万が一、契約違反があった際には、裁判の判決を経ずに、いきなり強制執行できます。

例えば、不貞行為の慰謝料として300万円と定めていた場合、裁判しなくても、相手の銀行預金や給料を差し押さえることができるのです」

公正証書はかなり強力な手段なのですね。もちろん、その刀を抜かずに済むように、夫婦円満でいることが第一ではありますが……。

 

4:まとめ

日本ではまだなじみの薄い結婚契約書ですが、夫婦間であらかじめ結婚観のすり合わせを行うのは、結婚後の「こんなはずじゃなかった!」を防止する有用な手段だと言えそうです。

もちろん、内容をあとから変更することも可能なので、結婚する前に結婚契約書を作成してみてはいかがでしょうか。

 

【取材協力】

矢野京介・・・弁護士。大阪府立大学経済学部卒業。1999年に東京弁護士会に登録。の代表として、主に離婚問題や中小企業の法律問題に取り組む。

 

【参考】