エヴァで有名に!「ヤマアラシのジレンマ」恋愛の心理学と葛藤解決法

「密かに好意を寄せている男性からの誘いを断ってフラグをへし折った」「大好きな彼に意地悪ばかり言って破局を招いてしまった」などなど。「なんであんなことしちゃったんだろう……」という経験があなたにもありませんか? 今回は、心理学で有名な“ヤマアラシのジレンマ”について解説します。

1:エヴァで有名に!「ヤマアラシのジレンマ」の意味は?

(1)「ヤマアラシのジレンマ」の意味は?

「ヤマアラシのジレンマ」の由来は、ドイツの哲学者ショーペンハウアーの寓話です。

ある寒い日、2匹のヤマアラシが、お互いに身を寄せ合って温め合おうとしたが、近づきすぎると全身の針が相手に刺さって傷つけてしまう。

かといって、離れると今度は凍えてしまう。2匹は近づいたり離れたりを繰り返して、最後は互いに傷つけ合わず暖もとれる最適な距離を見つけた。

このショーペンハウアーの寓話を、心理学者のフロイトや精神分析医のべラックが引用し、「ヤマアラシのジレンマ」は人間関係にたとえられるようになったようです。

(2)「心理学」の言葉だが、英語でなんていう?

英語では“hedgehog’s dilemma”といいます。“hedgehog’”とは“ハリネズミ”のことなので、「ヤマアラシのジレンマ」は「ハリネズミのジレンマ」といわれることもあります。

ちなみに、“hedgehog’s dilemma”は、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』第4話「雨、逃げ出した後」のサブタイトルにも用いられています。また、第3話には、登場人物の赤城リツコが葛城ミサトとの会話において「ヤマアラシのジレンマ」に言及するシーンも。

エヴァについては、さまざまな解釈がなされているため、同作での「ヤマアラシのジレンマ」が何を意味するのかは一義に決めることはできません。

ただ、ひとつの解釈として、「他者に対して心を閉ざしがちだった主人公・碇シンジが、自分を取り巻く人々との心理的距離をつめるまでの葛藤を示している」というとらえ方はできるでしょう。

 

2:恋愛でよくある……「ヤマアラシのジレンマ」具体例

“ヤマアラシのジレンマ”は恋愛でもよく見られる現象です。寓話では、2匹のヤマアラシが最終的に適度な距離感をつかむことができていますが、恋愛ではなかなかうまくいきませんよね。具体例を見ていきましょう。

(1)10年以上、“友達以上、恋人未満”の男女

「もうふたり、付き合っちゃえばいいのに」と周囲から冷やかされるほど仲良しのリエさんとトオルさん。中学の陸上部でチームメイトになって以来、10年以上の友情が続いています……が、実はリエさんは、トオルさんにずっと片思い中。

この10年間、お互いに彼氏・彼女ができたこともありました。恋愛相談に乗り合ったこともありました。一緒にお酒を飲んだとき、トオルさんがしみじみとこう漏らしたこともあります。「リエには何でも腹を割って話せる」と。

「それならなんで私をカノジョにしてくれないの?」と心の中でツッコミを入れるリエさんですが、口に出すことはできません。

本当の気持ちを打ち明けて、ふたりの関係を壊してしまうのが怖いのです。

(2)本当の自分を知られたくない女

堀北真希似の美女、ユウコさんは、職場のマドンナ的存在。これまで社内でも取引先でも、あまたの男性がユウコさんにアプローチをかけては、次々と撃沈しています。

そんなユウコさんには誰にも知られていない秘密が……。実はユウコさん、BL(ボーイズ・ラブ)漫画・小説をこよなく愛する“腐女子”なのです。

もちろん、ユウコさんは生身の男性に関心がないわけでありません。男性に優しくされたり、頼りがいのあるところ見せられたりしたら、「この人いいな」とトキメくことはあります。

しかし、「どうせ本当の私を知ったら、この人もきっと幻滅するはず」。そんな不安に支配されて、自分に好意を持つ男性にわざと冷たい態度をとり、相手の心をへし折ってしまうのです。

(3)即レスを求めすぎて交際が進展しない女

清楚で男ウケしそうな外見なのに、婚活が10年以上も難航しているミホさん。

ミホさんとのお見合いを希望する男性は何人も現れるのですが、その後、交際、結婚へとステップを進めることができません。

その元凶は、ミホさんの極度の男性不信。「お見合いで知り合った男性に対してメールやLINEの即レスを求めすぎる」からなのです。

返信が少しでも遅れると、すぐに「私と向き合ってくれない」「もうあなたのことは信用できない」とキレてしまい、自分から交際をお断りするか、あるいは相手の男性のほうが「こんな重い女と付き合えない」と逃げ出してしまうのです。

(4)付き合ったり離れたりを繰り返す男女

同棲中の彼氏、コウイチさんの浮気が発覚するたびに、「もう別れる、出て行け!」とマンションから彼を追い出すサキさん。しかし、「あんな男の顔、2度と見たくもない!」という気丈さはいつも3か月ともちません。

サキさんが寂しさを感じ始める頃合いを見計らうかのように、コウイチさんがシレッと戻ってくるのです。そして、「やっぱり俺にはお前しかいない」などと泣きつかれると、サキさんは「今度こそは……」とつい許してしまう。

そんなサキさんとコウイチさんの“腐れ縁”ともいえる関係は、もう5年以上も続いています。

(5)交際が長続きしない女

アケミさんは過去3年間で、8人の男性と交際。恋に落ちると「この人こそ私の運命の人!」と夢中になるのに、いつも長続きしません。

付き合い始めて3か月も経たないうちに、相手のイヤな面ばかりが目につくようになるのです。

たとえば、相手が冗談で言ったつもりの言葉に深く傷ついたり、たった5分の遅刻が許せなかったり、寝相や寝言が気に食わなかったり……。

ささいなことがきっかけで相手に嫌悪感をもよおし、そこからは「あなたのここがダメ」「そこも嫌い」と事あるごとに痛烈な批判を浴びせます。

結局、アケミさんのほうから「もうあなたとはやっていけない」と別れを切り出すか、相手の男性の神経がまいってしまうかで、いずれにせよ交際は半年ももちません。

(6)敏感すぎる女

エリカさんの場合、自分を責めることで墓穴を掘ってしまいます。

たとえば、彼氏がデート中にちょっとでも不機嫌そうな顔をすると、不安でいてもたってもいられない。そこで、「最近、仕事の疲れがたまっててさ」と彼氏が言っても、「疲れているのにデートにつき合わせて申し訳ない」などと罪悪感をもち、ぎこちない態度をとるのでかえって彼氏を疲れさせてしまう……。

大ゲンカして破局するわけでもないのですが、相手の言動から必要以上にネガティブなメッセージを受け取ってしまうエリカさんは、いつも彼氏とは少しずつ疎遠になって関係を深められません。

(7)ホンネが話せない男女

リョウコさん・テツヤさんのふたりは交際8年目。映画、ゲームという共通の趣味があるふたりは、長年交際していても話題には事欠かず、傍目には仲良しカップルそのものです。8年間、ほぼケンカらしいケンカもしたことがなく、リョウコさんはテツヤさんとまったり過ごす時間に心地よさを感じています。

ただ、その一方で、リョウコさんはふと一抹の寂しさを感じることも。というのも、ふたりは趣味の話で盛り上がることはできても、互いの内面にはほとんど踏み込んだことがないのです。

たとえば、リョウコさんが職場の人間関係に悩み「会社辞めちゃおうかな」と漏らした際は、テツヤさんはただ「ふーん。イヤなら辞めれば?」と答えただけ。他方で、リョウコさんはテツヤさんが何かに思い悩む姿を見たことがありません。

 

3:「ヤマアラシのジレンマ状態」を打破するには?

(1)自分の思考パターンに気付く

「ヤマアラシのジレンマ」で悩む人というのは、相手に近づきすぎるか、距離をおきすぎるか、いずれにせよ他者と適切な距離をとるのが苦手です。

その原因のひとつは、「~かもしれない」「~にちがいない」と一面的な思い込みにとらわれすぎること。

たとえば、近づきすぎる人は「相手は自分にこれくらいのことをしてくれて当然」という要求が過度に高く、逆に距離をおきすぎる人は「相手に嫌われるかもしれない」という恐れを抱いています。

まずは、人間関係における過去の失敗体験を振り返り、そこに共通する思考パターンがないか探ってみましょう。

その際、注意すべきなのは、決して相手も自分も責めないこと。「彼がひどい男だったから」とか「自分にこんな至らない点があったから」という犯人探しをするのではなく、ただそのとき自分がどう感じていたのかに向き合うのがポイントです。

自分の思考パターンに気づけば、それだけでも問題は半分解決したも同然。次回から同じパターンにハマりかけたときに、「あっ、これはいつものアレだ」とバッドエンドに突き進もうとする自分にブレーキをかけることができるでしょう。

(2)自己ツッコミ力を鍛える

過去の失敗体験を振り返ると苦しくなるばかりで、なかなか冷静に分析などできないし、自分の思考パターンがわからない……。

そういう人には、もう少し手軽な方法をおすすめします。それは、自分のネガティブ思考にセルフツッコミを入れること!

相手が自分の期待通りに動いてくれなくて猛烈にムカつく。もしくは、自分が相手から嫌われたり拒否されたりしないかと不安で仕方がない。そのようなネガティブ思考が頭をグルグルまわり始めたら、すかさず「それってホント?」「なんでやねん」とツッコミを入れてみましょう。

もっともよくないのは、自分の思い込みにとらわれたまま、人間関係にかかわる行動を選択することです。もちろん、ツッコミを入れてもネガティブ思考がストップするとは限りませんが、入れると入れないでは大違い。

日ごろから自己ツッコミ力を鍛えておけば、ふとした瞬間に「あれ? なんか自分の考えって偏ってない?」と気付けることもあるのです。

(3)自分の幼少時代を振り返る

他者と適切な距離をはかることが極端に苦手だという人は、幼少期の親子関係が影響しているとも考えられます。

たとえば、親から常に否定的な言葉ばかり浴びせられてきた人は、潜在的に「自分は誰からも受け入れられないのでは?」という不安を抱えているため、他者との関わりを避けようとする傾向があるといいます。

また、親が子供をうまく愛せなかったために、子供が「親からもっと愛されたかった」という思い残しを抱えている場合は、親からもらえなかった愛情を他者に求めて、距離を詰めすぎてしまうこともあるでしょう。

あるいは、両親が常にいがみあっていたり、仮面夫婦で互いに無関心の状態を保っていたりするのを見て育った子は、それを“人間関係のモデル”としてインプットしてしまいます。すると、他者と適切な距離をつかめなくなってしまうのです。

本当は人と親しくなりたいのに、近づくのが怖い。もしくは、相手を傷つけてしまうという人は、自分の幼少時代を振り返ってみましょう。

両親の影響で自分がうまく人間関係を築けないという点に気付けたら、大きく一歩前進です。これからは、目の前の相手に対して、「この人は自分の両親とは違うのだ」と強く意識するようにしましょう。

(4)人間関係のモデルを学ぶ

勉強でもスポーツでも仕事でも、うまい人がやっていることをマネすることが上達への近道ですよね。

どうしても他者とうまく付き合うことができない、という人は、人間関係のモデルをどんどん吸収すべし。

カップルでも友人でも、あなたの周囲に「うらやましいなぁ」と思える関係性を築けている人たちがいないでしょうか。その人たちの言動をよく観察してみましょう。

「えっそんなこと言って嫌われないの?」と驚くようなことをズケズケと言っていたり、それでいてキメ細やかな心遣いを示していたりなど、多くの発見があるはずですよ!

 

4:葛藤したら参考に……ヤマアラシのジレンマが学べる本

最後に、ヤマアラシのジレンマが学べる本をご紹介しておきましょう。

(1)『みんなでぬくぬく』(エルザ・ドヴェルノア他、童話館出版)

ヤマアラシのジレンマについて学べる本の中で、もっとも易しくて優しい本のひとつ。

設定は、ショーペンハウアーの寓話とほぼ同じなのですが、登場するのがハリネズミとリスです。

寒い寒い冬の夜、2匹が暖かく眠るためにとった行動とは? 思わずほっこりするイラストと結末から、ヤマアラシのジレンマを克服するヒントをつかみましょう。

(2)『ハリネズミの願い』(トーン・テレヘン、新潮社)

『みんなでぬくぬく』よりも大人向きの童話ですが、こちらも読みやすいです。自分の針が大嫌いでコミュ障のハリネズミが、誕生日会にいろいろな動物たちを招待しようと思い立つのですが……はたしてハリネズミにお友達ができるのか?

(3)『特定の人としかうまく付き合えないのは、結局、あなたの心が冷めているからだ』(五百田達成、堀田秀吾、新潮社)

物語から学ぶのではなく、もう少し具体的なノウハウを知りたい人にはこちらがオススメ。人間関係の距離感がつかめない人にとって、役立つ情報満載です。

『特定の人としか~』とありますが、誰ともうまく付き合えないという人が読んでも、実践してみたいノウハウが見つかることでしょう。

(4)『人間アレルギー なぜ「あの人」を嫌いになるのか』(岡田尊司、新潮社)

ヤマアラシのジレンマについて、メカニズムをちゃんと知りたい……という人はこちらもどうぞ。

極度に他者を避けてしまう“人間アレルギー”について、精神科医の岡田尊司氏が分析しています。岡田氏の著書は、このほか『パーソナリティー障害』や『愛着障害 子ども時代を引きずる人々』などもオススメです。

 

近づきすぎて傷つけ合ったり、逆に距離をとりすぎたりを繰り返しながら、人間関係の間合いを探るのは、誰でも直面する課題です。

そして、「ここが適切なポイントだ!」というのは、結局は体感することでしか学ぶことはできません。大切なものを傷つけたり失ったりすることには痛みもともないますが、それでも諦めずに、あなたなりの最適距離をつかんでくださいね。